『午後の光線』レビュー|残酷な痛みの先で、二人だけが見つけた小さな光

「読後もしばらく、頭から離れない漫画を読みたい。」

そんな方におすすめしたいのが、南寝先生の『午後の光線』です。

家庭に居場所を見つけられない淀井と、学校でいじめを受けている村瀬。

それぞれが人には簡単に見せられない「痛み」を抱えた二人が出会い、少しずつ互いの存在を必要としていく物語です。

決して、読みやすい作品ではありません。

いじめ、家庭環境、トラウマ、孤独など、読んでいて胸が苦しくなるような場面もあります。

それでも、ただ暗いだけの漫画ではありません。

傷ついた二人が、お互いの存在によって少しずつ救われていく。その過程には、暗闇の中に差し込む一筋の光のような美しさがあります。

私は正直、BL描写がかなり苦手です。

読み始めたときには、「最後まで読めるだろうか」と思いました。

それでも読み終えた今は、最後まで読んで本当によかったと思っています。

この記事では、南寝先生の『午後の光線』について、できるだけネタバレを避けながら、私が感じた魅力や印象に残った場面を紹介します。

『午後の光線』レビュー|残酷な痛みの先で、二人だけが見つけた小さな光

「読後もしばらく余韻が抜けない漫画を読みたい。」

そんな方におすすめしたいのが、南寝先生の『午後の光線』です。

心に深い闇を抱えた二人が、残酷な現実のなかで互いだけを拠り所にしながら、小さな光を見つけようともがく物語。

決して読みやすい作品ではありません。しかし、人間の弱さや孤独、愛への渇望をここまで痛々しく、それでいて美しく描いた漫画はそう多くないでしょう。

この記事では、BL描写が苦手な私だからこそ感じた率直な感想を交えながら、本作の魅力をネタバレをできるだけ避けて紹介します。

まず最初に伝えたい注意点

『午後の光線』には、BL的な関係性や性的な描写があります。

また、いじめや家庭環境、トラウマなど、かなり重いテーマも扱っています。

そのため、誰にでも気軽におすすめできる作品ではありません。

私自身、BL描写はかなり苦手です。

正直に言えば、読み始めたときは「これはちょっと苦手かもしれない」と感じました。

ただ、読み進めるうちに、単純な恋愛漫画としてではなく、「傷ついた二人の少年が、互いの存在によって少しずつ生きる場所を見つけていく物語」として強く惹かれていきました。

もちろん、BL描写そのものが苦手で、そうした表現を受け入れられない方にはおすすめしません。

一方で、多少のBL要素があっても、心理描写や人間ドラマを重視して漫画を読む方なら、印象に残る作品になると思います。

そしてもう一つ。

精神的にかなり疲れているときには、読むタイミングを選んだ方がいい作品です。

人間の弱さや孤独、家庭の問題、いじめなどが真正面から描かれるため、読後もしばらく気持ちを引きずるかもしれません。

それでも、その重さの中にある「人と人がつながることの尊さ」が、本作の大きな魅力だと私は感じました。

基本情報

項目内容
タイトル午後の光線
著者南寝
出版社KADOKAWA
発売日2024年9月6日
判型B6判
ページ数274ページ
巻数全1巻・完結
ジャンル青春・ヒューマンドラマ・BL要素を含む作品
ISBN978-4-04-811335-9

『午後の光線』は、南寝先生による一冊完結の漫画です。

KADOKAWAから2024年9月6日に単行本が発売され、274ページに物語が凝縮されています。カドコミでは2024年5月から公開され、単行本として完結しています。

なお、作品の分類については媒体によって違いがあります。

カドコミではBLタグが付けられている一方、電子書店では青年マンガとして掲載されているケースもあります。

個人的には、「BLだから」という理由だけで読む・読まないを決めるよりも、重いテーマを扱った青春ヒューマンドラマとして興味を持った方に読んでほしい作品です。

ネタバレなしのあらすじ

物語の中心にいるのは、中学生の淀井と村瀬です。

淀井は、母親とその恋人を取り巻く家庭環境に悩みながら日々を過ごしています。

一方の村瀬は、トラウマによってグロテスクなものに性的な興奮を覚えるという、人には簡単に理解してもらえないものを抱えています。

そんな村瀬は学校でいじめを受けています。

ある日、淀井は村瀬がいじめられている場面を目撃します。

それをきっかけに、二人は少しずつ関わるようになります。

境遇は違っていても、二人にはそれぞれ誰にも簡単には理解してもらえない「痛み」がありました。

そして、その痛みを知るからこそ、二人は互いにとって特別な存在になっていきます。

『午後の光線』は、単純な恋愛だけを描いた作品ではありません。

「誰かに必要とされること」

「誰かの痛みを知ること」

「自分ではない誰かの存在によって、生きることが少しだけ楽になること」

そんな、人と人とのつながりそのものを描いた物語だと私は感じました。

ただし、その先には決して平坦ではない現実が待っています。

だからこそ、この二人の関係がどうなっていくのかは、ぜひ実際に作品を読んで確かめてほしいと思います。

この作品の魅力

『午後の光線』の魅力を挙げるなら、私は次の5つだと思います。

  • 二人の少年が抱える「痛み」の描き方がリアル
  • 心理描写が細やかで、登場人物の感情が伝わってくる
  • 人間の弱さや孤独をきれいごとだけで描いていない
  • 重い物語の中に、確かな優しさがある
  • 読み終えたあとも、二人のことを考えてしまう

特に印象的なのは、「かわいそうな少年」として二人を描いて終わらないところです。

淀井にも村瀬にも、それぞれの考え方や弱さがあり、時には危うい部分もあります。

だからこそ、二人の関係は単純な「救う側」と「救われる側」ではありません。

互いに足りないものを埋め合いながら、それぞれが相手にとって必要な存在になっていく。

その関係性が、この作品を単なる重い漫画で終わらせていない理由だと思います。

傷だらけの二人だからこそ、生まれた優しさ

私が『午後の光線』を読んで一番惹かれたのは、淀井と村瀬の距離感でした。

二人は、最初から相手を「救ってあげよう」としているわけではありません。

むしろ、自分自身が傷ついているからこそ、相手の痛みに気づくことができる。

それが少しずつ二人を近づけていきます。

誰かに「大丈夫?」と言われても、簡単には大丈夫になれない。

でも、ただ隣にいてくれる人がいるだけで、ほんの少し呼吸がしやすくなることがあります。

本作で描かれているのは、まさにそんな関係なのだと思いました。

淀井にとって村瀬が必要になり、村瀬にとっても淀井がかけがえのない存在になっていく。

その過程には、きれいなだけではない危うさもあります。

だからこそ私は、この二人の関係を「理想的な愛」と簡単に言ってしまうことには少し違和感があります。

それでも、誰にも理解されなかった二人が、お互いの存在によって少しずつ変わっていく姿には、強く心を動かされました。

個人的に最も苦しかった「靴下」の場面

※ここからは本編の一部に触れますが、結末のネタバレは避けています。

私が個人的に最も強い嫌悪感を覚えたのが、「靴下」の場面です。

この場面が苦しかったのは、単純に気持ち悪い出来事として描かれているからではありません。

そこには、少年の純粋さにつけ込む大人の身勝手さがあります。

「少しでも母親の力になりたい」

そんな思いから行動している少年に対して、大人の欲望が入り込んでくる。

その構図が、読んでいて本当に嫌でした。

人間には、どうしてここまで他人の弱さにつけ込めるのだろう。

そう思わされる場面です。

しかも、この作品では大人の悪意だけを大げさに描いているわけではありません。

少年が置かれている状況や、母親との関係など、さまざまな事情が重なっているからこそ、余計に生々しく感じられます。

私はこの場面を読んだとき、思わずページを閉じたくなりました。

でも、だからこそ強く印象に残っています。

『午後の光線』が描く「痛み」は、きれいな言葉だけでは済ませられない。

そのことを象徴している場面の一つだと思いました。

淀井という少年が抱える「死の影」

私が特に強く印象に残ったのが、淀井という少年です。

彼には、どこか自分自身を大切にできていないような危うさがあります。

人のためには一生懸命になれる。

相手の痛みには敏感なのに、自分自身の痛みには鈍感。

そんなアンバランスさが、淀井という人物の危うさにつながっているように感じました。

私は、彼の自己犠牲的なところを見ていると、

「誰かに必要とされることでしか、自分の存在価値を確認できないのではないか」

と思ってしまいました。

もちろん、これは私自身の読後の解釈です。

作品が単純に「淀井はこういう人間だ」と説明しているわけではありません。

だからこそ、読者によって淀井の行動の見え方は変わると思います。

優しい少年なのか。

危うい少年なのか。

それとも、その両方なのか。

私には、優しさと危うさが同居している少年に見えました。

そして、その危うさを理解していくうえで、村瀬との関係が非常に重要になっていると思います。

二人は互いに相手を必要とすることで、ほんの少しずつ前を向いていきます。

その姿が美しいからこそ、読んでいるこちらは、二人にはこのまま幸せになってほしいと願わずにはいられませんでした。

タイトル『午後の光線』が意味するもの

読み終えたあと、私は何度もタイトルについて考えました。

「午後の光線」。

この言葉から私が思い浮かべたのは、真昼の太陽のような強烈な光ではありません。

少し傾いた太陽から差し込む、柔らかな光です。

暗い場所を一気に照らし出すほど強くはない。

でも、確かにそこにある。

私は、この作品に描かれている希望も、そんな光なのではないかと思いました。

淀井と村瀬の人生が、一気に明るくなるわけではありません。

抱えている問題がすべて消えてなくなるわけでもない。

それでも、二人が出会ったことで、それまで暗かった場所に少しだけ光が差し込む。

その光が、二人にとっての「午後の光線」なのではないでしょうか。

もちろん、これはあくまで私自身の解釈です。

読者によって、タイトルから受け取る意味はきっと違うと思います。

ただ、読み終えたあとにタイトルをもう一度見ると、「午後の光線」という言葉が妙に胸に残りました。

大きな希望ではない。

人生を劇的に変えるような光でもない。

それでも、確かに存在する小さな光。

私はそんな作品として、このタイトルを受け取りました。

こんな人におすすめ

『午後の光線』は、次のような方におすすめしたい作品です。

  • 読み終えたあとも長く余韻が残る漫画が好きな人
  • 心理描写を重視して漫画を読む人
  • 人間の孤独や弱さを描いた作品が好きな人
  • 重いテーマの中に小さな希望を見つける物語が好きな人
  • 一冊完結で濃密な物語を読みたい人
  • 少年同士の複雑な関係性を描いた作品に惹かれる人

特におすすめしたいのは、「読んで楽しかった」で終わる漫画よりも、読み終えたあとに登場人物について考えてしまうような作品が好きな方。

『午後の光線』は、まさにそんな一冊です。

ページ数は274ページですが、物語が薄いとはまったく感じません。

むしろ、一冊の中に二人の少年が抱える痛みと、その関係性がぎゅっと詰め込まれています。

おすすめしない人

一方で、次のような方には、あまりおすすめしません。

  • BL的な描写が苦手な人
  • いじめや家庭問題など重いテーマが苦手な人
  • トラウマを扱った物語を読むのがつらい人
  • 明るく爽やかな読後感の漫画を読みたい人
  • 読後に気持ちを引きずる作品を避けたい人

『午後の光線』は、気軽に読める青春漫画ではありません。

読んでいる途中で「ちょっと重いな」と感じる場面もあります。

私自身、BL描写が苦手だったこともあり、最初は何度か読むのをやめようと思いました。

それでも最後まで読んだのは、重さだけでは終わらないものが、この作品にはあったからです。

「苦しいけれど、読んでよかった」。

私にとっては、そんな一冊でした。

FAQ

BLが苦手でも読めますか?

私自身もBL描写は苦手でした。

そのため、同じようにBLが得意ではない方の気持ちはある程度わかるつもりです。

ただし、本作にはBL的な描写があるため、そうした表現を完全に受け入れられない方にはおすすめしません。

一方で、人間ドラマや心理描写を重視して読む方なら、BLというジャンルだけで避けるのは少しもったいない作品だと思います。

かなり重い作品ですか?

はい。かなり重いテーマを扱っています。

いじめ、家庭環境、トラウマ、孤独など、読んでいて胸が苦しくなる場面があります。

ただ、最初から最後まで重苦しいだけではありません。

二人の関係には、ところどころ優しさや温かさも描かれています。

その「暗さ」と「光」の落差が、本作の魅力だと感じました。

救いのある物語ですか?

私は「大きな救いがある物語」というより、「小さな救いが確かに存在する物語」だと感じました。

すべての問題がきれいに解決するわけではありません。

それでも、誰かと出会い、必要とされ、誰かを大切に思うことで、人間はほんの少しだけ変わることができる。

そんな希望を感じさせてくれる作品です。

どんな人に特におすすめですか?

人間の心の傷や孤独を丁寧に描いた漫画が好きな方におすすめです。

特に、読後に「この人物は何を考えていたのだろう」と何度も考えてしまうような作品が好きなら、かなり印象に残ると思います。

また、全1巻で完結しているので、長編漫画を何十巻も追うのが苦手な方にも読みやすい作品です。

痛みを描いた漫画が好きな方へ

『午後の光線』のように、人間の弱さや孤独、残酷な現実を描きながら、その奥にある小さな希望まで描いた作品には、独特の余韻があります。

読んでいる最中は苦しい。

それでも、読み終えたあとに「読まなければよかった」とは思わない。

むしろ、登場人物たちのことを何度も考えてしまう。

『午後の光線』は、私にとってそんな漫画でした。

当ブログでは、このほかにも、人間の心の痛みや孤独、不穏な空気を描いた漫画を紹介しています。

「ただ楽しいだけではない漫画を読みたい」

「読後に心に残る作品を探している」

そんな方は、ぜひこちらの記事もあわせてご覧ください。

読後に心をえぐられる。不穏で後味が残るおすすめ漫画10選【大人向け】

まとめ

『午後の光線』は、決して万人向けの漫画ではありません。

BL的な描写があり、いじめや家庭環境、トラウマなど、読む人によってはかなり重く感じるテーマも描かれています。

私自身、BL描写が苦手なので、読み始めたときには「最後まで読めないかもしれない」と思いました。

それでも、最後まで読んで本当によかったと思っています。

この作品の魅力は、単純な恋愛や友情だけではありません。

傷ついた二人が、お互いの「痛み」を知り、少しずつ相手を必要としていく。

その過程を通して、「人は誰か一人に理解されるだけでも、生きることが少し楽になるのかもしれない」と感じさせてくれます。

もちろん、物語は決して甘くありません。

だからこそ、二人の間に生まれた優しさが、より強く心に残ります。

そして読み終えたあと、私はタイトルの「午後の光線」という言葉を何度も思い返しました。

真昼の太陽のような、強くまぶしい光ではない。

暗い場所に、ほんの少しだけ差し込む光。

それでも、その光があるだけで、人は前を向けるのかもしれない。

『午後の光線』は、そんな小さな希望を感じさせてくれる作品でした。

重いテーマでも構わない。

心に残る漫画を読みたい。

読み終えたあとも、登場人物について考え続けてしまうような作品が読みたい。

そんな方には、ぜひ一度手に取ってほしい一冊です。

私のようにBL描写が苦手な方には少しハードルがあるかもしれません。

それでも、その先にある物語まで読んでみてほしい。

『午後の光線』は、私の中に長く残り続ける漫画の一冊になりました。

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