『青い煮凝り』感想|エドワード・ゴーリーが描く狂信と執着の結末

エドワード・ゴーリーの絵本が好きです。

唯一無二の不思議な作家です。

 

なぜ、ゴーリーが好きなのか

私はアンティーク家具や、職人手作りの工芸品など、長い時間を経ても変わらない「本物」に囲まれる生活をしたいと思っています。

ゴーリーの描く退廃美にも、「永遠に凍り付いた不条理」があり、これがどうしようもなく心地良いのです。

 

今や私たちの暮らしに欠かせない「推し活」。

誰かを全力で応援し、その存在から癒やしや生きるエネルギーをもらうことは、人生をより豊かにする素晴らしい営みです。

好きなものを大切に想う気持ちは、本来、とても尊いものです。

しかし、その純粋な情熱が「一線」を超えてしまった時、愛はどのような形に変貌するのでしょうか。

今回ご紹介するのは、エドワード・ゴーリーの『青い煮凝り』。

現代的な「推し活」という言葉からは想像もつかない、孤独と崩壊の物語です。

救いなき情熱の行き着く先――。

ゴーリーの冷淡かつ優雅な眼差しを通して、私たちの抱く「好き」という感情の危うい境界線について考えさせられます。

彼の作品群の中でも「報われない情熱」と「容赦のない不条理」が際立つ、残酷な一冊です。

エドワード・ゴーリー【青い煮凝り】

エドワード・ゴーリーの特徴

  • モノクロの緻密な線画:古い建築物や退廃的な風景などを繊細なモノクロームの線で表現します。
  • 不条理で残酷な物語:理由なく子どもが死んでしまうなど、救いのない物語が多いです。
  • 優雅なユーモア:不穏さのなかに独特のユーモアが含まれています。
  • 詩的な文章:韻を踏んだ詩的な文章が添えられています。
  • 古典的な雰囲気:重厚で退廃的な雰囲気です。
  • 不思議な生き物:不気味かつ愛らしい謎の生き物が登場します。

ゴーリーの世界は、因果応報的なバランスがなくブラックです。

でも、そのなかに、可愛らしさや、ユーモラスな雰囲気も漂っています。

また、哲学的なテーマや風刺が多く含まれています。

この不思議な可笑しさ。

これがゴーリーの特徴なのです。

青い煮凝り

無名のオペラ歌手と、彼女に対して一方的に片想いするジャスパー。

2人の悲劇の物語です。

彼女のライバルなどがだんだんと消えていくとともに、彼女は次々にチャンスを掴んで売れていきます。

明示されてはいませんが、ジャスパーの暗躍によるものと想像させます。

彼女のために人生のすべてを捧げ、執着を見せるジャスパー。

彼女とは反対にジャスパーはどんどん転落していきます。

肺炎になり、失業し、住まいを追い出されます。

そして、最悪の結末へ⋯

ゴーリー的問題提起

ゴーリーの作品には「理由のない不幸」がよく登場します。

本作でもなんといってもその救いのなさが際立ちます。

推し活と恋愛は本来異なるものです。

しかし、相手への思いが自己犠牲や独占欲へ変わった瞬間、その境界は曖昧になります。

相手が誰であろうと、両想いになれることは稀です。

にも関わらず恋心はコントロール不可能。

恋心は暴走して一線を越える。

もしかしたら、誰でも同じようなことをしてしまう可能性は否定できません。

では、どうしようもない恋心はどのように処理されるべきなのか。

ゴーリーはジャスパーを声高に断罪しません。

彼を英雄として描くことも、悪人として裁くこともないのです。

ただ淡々と、その転落を見つめ続けます。

その冷静な視線があるからこそ、読者は「自分なら絶対にこんなことはしない」と笑い飛ばせません。

私は、この作品は「どうしようもない想いを、人はどのように抱えて生きるべきなのか」という問いを投げかけているように感じました。

報われない感情そのものが悲劇なのではありません

それを他者への執着や自己犠牲へ変えてしまった瞬間、人は自らをも破滅へ導いてしまう。

その残酷な現実を、ゴーリーは裁くことも慰めることもなく、静かに描いているのではないでしょうか。

まとめ

「人が何かに一生を捧げたとしても、それは往々にして無意味で、誰にも理解されずに終わる」という残酷な現実を、皮肉たっぷりに描いています。

 

努力した者も、狂信的な者も、ただ傍観している者も、死の前では等しく無力である

悲劇はドラマチックな予兆なしに、唐突に、事務的にやってくるということ。

​この「因果応報の欠如」こそが、ゴーリーが描く世界のリアリティであり、恐ろしさです。

ゴーリーは「人生なんて、こんなふうに理不尽で、噛み合わなくて、奇妙なものですよ」と、冷淡な目で見ています。

しかしどこか愛情のある眼差しで見ているようにも思えるのが不思議です。

だからこそ、読み終えたあとも、この物語だけは静かに心へ居座り続けるのです。

ゴーリーの世界は、まだまだ終わりません。

今回、ご紹介した「青い煮凝り」はゴーリーの描く不条理劇の一端です。

彼の作品に共通する『中毒性のある退廃美』や世界観の全容について、別の記事でまとめています。

『青い煮凝り』が気に入った方なら、きっと他の作品にも惹かれるはずです。

子どもの死、不条理、ブラックユーモア、そして退廃美。

ゴーリー沼にさらに深く足を踏み入れたい方はぜひコチラも覗いてみてください。

本物を愛する私が選ぶ、暮らしと作品たち

私は、流行に流されるものよりも、年月を重ねるほど味わいが深まる「本物」が好きです。

アンティーク家具や天然素材の道具、無添加の食品、そしてエドワード・ゴーリーのように時代を超えて愛される作品たち。

このブログでは、実際に使って良かった愛用品や、心に残った本・映画・漫画などを、自分の言葉で紹介しています。

「長く大切にしたいもの」を探している方は、ぜひプロフィール記事もご覧ください。

https://supikuru.com/police/

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