エドワード・ゴーリーの絵本が好きです。
唯一無二の不思議な作家です。
今回は「むしのほん」の感想です。

エドワード・ゴーリーの特徴
- モノクロの緻密な線画:古い建築物や退廃的な風景などを繊細なモノクロームの線で表現します。
- 不条理で残酷な物語:理由なく子どもが死んでしまうなど、救いのない物語が多いです。
- 優雅なユーモア:不穏さのなかに独特のユーモアが含まれています。
- 詩的な文章:韻を踏んだ詩的な文章が添えられています。
- 古典的な雰囲気:重厚で退廃的な雰囲気です。
- 不思議な生き物:不気味かつ愛らしい謎の生き物が登場します。
ゴーリーの世界は、因果応報的なバランスがなくブラックです。
でも、そのなかに、可愛らしさや、ユーモラスな雰囲気も漂っています。
また、哲学的なテーマや風刺が多く含まれています。
この不思議な可笑しさ。
これがゴーリーの特徴なのです。
むしのほん
子どもは喜び、大人は考えさせられる絵本。
少しゴーリーにしては珍しい点が見られます。
1 通常、ゴーリーの作品といえば、子供が次々と災難に遭う『ギャシュリークラムのちびっ子たち』のような、不条理でダークな世界観が特徴です。しかし、『むしのほん』は一見すると「道徳的な教育絵本」の体裁をとっています。
2 ゴーリー作品には珍しく、鮮やかな色彩が使われています。
3 他の作品のような「死」の気配が薄い。「逆に不気味(何か裏があるのでは?)」と勘ぐってしまうような、独特の緊張感が漂っています。
・あらすじ
赤い虫と青い虫と黄色い虫はとても仲がいい。
ある日、黒い虫が現れる。
最初は仲良くしようとするけど「うまくいきませんでした。」
で、力を合わせて黒いむしをぺしゃんこにします。
その後、虫たちは楽しく過ごしましたとさ。
さて、どう考えるべきか。
作者はゴーリーですから、単なる勧善懲悪的な話を描きたいわけはないです。
赤い虫たちは悪者なのか。
黒い虫と仲良くできなくて、結果ぺしゃんこにしてしまったことがやり過ぎなのか。
自分たちの平穏を犠牲にしてしてでも、黒い虫になんらかの譲歩をすべきだったのか。
そうでないとすれば、赤い虫たちは正しかったのか。
答えは誰にもわかりません。
人類が繰り返してきた、そして今も繰り返されている民族紛争の歴史をコンパクトに突きつけていて、さすがゴーリーです。
イスラエルパレスチナ紛争も、ウイグル問題もですよね。
そして、身近なところでも存在します。
クルド人問題。
我々はどうすべきなのか。
まさにこの絵本の内容は、自分たち自身の問題なのだと認識させられます。
まとめ
「勧善懲悪という形を借りて、生物の本能的な排他性や残酷さを、美しく奇妙な絵に閉じ込めた」と言えるでしょう。