落語

桃月庵白酒CD【白酒四世紀半】表現力豊かな白酒流落語の世界へ

私の好きな落語家さん。

桃月庵白酒

落語会や寄席でも屈指の人気者です。

艶のある歯切れのよい美声でとても聴きやすい。

子ども役・女房役など人物描写が巧み、また声色も自由自在で表現力豊かな落語家です。

親しみやすそうな顔立ちも見ていて朗らかになります。

でも、高座では穏やかに見えても、実際には落語家は極度のストレスにさらされます。客を「必ず笑わせなければならない」芸人が不安に駆られるのは仕方ないことでしょう。

今回は、CD【桃月庵白酒25周年作品集 白酒四世紀半 the−25th-】に収録されている演目についてご紹介します。

白酒師匠が演じる噺は、上に記載したようにとても聴きやすいので購入して聴いてみるのもオススメです。

五つの噺が入っているので、一演目当たり500円少々と考えると決して高くはない。

各演目について、あらすじ等を簡潔にまとめておきます。

青菜

①旦那宅でのもてなし
 庭仕事を少しサボっている植木屋。教養ある旦那から冷えたお酒や鯛の洗いを振る舞われる。

②言葉遊びに感心
 旦那が奥様に青菜を出すように伝えると、「鞍馬から牛若丸が出まして、その名を九郎判官(菜を食らう)」という隠語で青菜がないことを伝える。
 旦那も「義経にしておけ(よし構わない)」と答える。

③植木屋が真似をする
 この隠語に感心した植木屋。
 帰宅して友人の半公を招き、同じことをしようとする。

④失敗の連続
 生ぬるい酒を出したり、イワシの塩焼きを出したり、
 「青菜は好きか?」と聞いても半公は「嫌い」と答えるなど失敗続き。

⑤オチ
 ようやく半公に食うと言わせると、汗だくの妻が「鞍馬から牛若丸が出ましてその名を九郎判官義経!」
 植木屋は「んー弁慶にしておけ」

オチの意味

植木屋が「義経にしておけ」と言いたかったのに、妻が「義経」まで言ってしまったのですね。

そこで、義経と主従関係にある「弁慶」が苦し紛れに出てきてしまったが、結局意味不明、最後まで失敗というわけですね。

居残り佐平次

①佐平次が仲間を連れだし品川の遊郭へ行く

②旨い魚と酒、芸者も呼んでどんちゃん騒ぎ
 仲間を帰したあと、朝風呂にも入り、また酒を飲む。

江戸時代の品川

落語では「品川は海に近い」ということを頭に置いておきましょう。
だから、魚が旨いのです。

現在の品川駅は江戸時代は海でした。明治以降の埋め立てで大きく地形が変わったのですね。

③店の若い衆が、「一度お勘定を…」と言うがはぐらかす。
 再び催促されても、「昨日の連中がまたやってくるので、その時勘定する」などと言いまたはぐらかす。

④仲間はやってこない。
 ここで改めて催促すると、「一文無しだ」と開き直る。

⑤居残りとなった佐平次ですが、客の座敷に忍び込んでは芸を披露し、幇間として人気者に。

⑥店の若い衆が佐平次に仕事を取られて困り、主人に佐平次を追い出してほしいと訴える。

⑦主人が佐平次を追い出そうとしますが、佐平次は抜け目ない交渉により、逃走費用や着物などをもらい受ける。

⑧店の若い衆が後をつけると佐平次は「居残り佐平次」と名乗り「飯屋でもやるよ」と悠々と去っていく。
 報告にきた若い衆に主人が「どうりで一杯食わせやがった」
 

オチの意味

「稼いだ金で飯屋でもやるよ」と言った佐平次に対し、「飯屋だから「食わせた」のか」ということですね。

他にもいくつかパターンがありますがここでは割愛します。

噺のなかで、
隅におけない→真ん中にしとけ
とか
「ちっちゃな頃から悪ガキで〜」
の部分が白酒師匠の創作でしょうか?

うまいですねー。

親子酒

①固い約束
 ある商家に酒好きの親子がいました。
 息子は酒癖か悪く、父親は息子の将来を心配して、一緒に酒を断つことを提案し、約束する。

②父親が辛抱できなくなる
 禁酒を始めてしばらく経つと、酒好きの父親は我慢できなくなり、女房に頼み込んで「一杯だけ」と酒を飲み始める。
 なにかと理屈をつけて杯を重ねとうとう酔っぱらってさしまう。

③息子の帰宅
 そこへ息子が帰ってきますが、出入りの旦那に誘われて酒を飲んできたため、すっかり酔っぱらっています。

④泥仕合
 父親が「なぜ酔っているのか」と息子を叱り、息子も反論し、滑稽な口喧嘩に発展。

⑤オチ
 「酒なんか飲むからお前、顔が7つもあるぞ。そんなやつに身代(財産)は譲れねぇ」

「私もこんなグルグル回る家なんていりません」

オチ

分かりやすいオチです。

新版三十石

田舎訛りの酷いお爺ちゃんがトンデモ「三十石船」を演じる噺。

この噺はですねー、、初めて聞いたとき全く理解できませんでした…💧

理解するには「石松三十石船」のあらすじを知っておくことが必要だと思いますので記載しておきます。

①金毘羅代参の帰り
 森の石松は、親分・清水次郎長の代理として四国金毘羅大権現への参詣(代参)を済ませる。

②三十石船に乗船
 帰り道、大阪から伏見へ向かう三十石船に乗り込む。

③子分の品定め
 船内で、次郎長の子分で一番強いのは誰かという話になる。

④石松の葛藤と振る舞い
 次郎長の子分として自慢の石松は、なかなか自分の名前が出ないことにヤキモキしながらも、江戸っ子に「江戸っ子だってねぇ、食いねぇ、寿司を食いねぇ」と酒と寿司を振る舞い、笑いを誘う。

⑤人情味あふれる結末
 その後、石松は身受人鎌太郎の家に泊まり、鎌太郎の次郎長への深い義理に感銘を受け、渡世人の友情と人情が胸を打つ。

芝浜

夫婦愛と人情の深さを描いた古典落語の代表作です。

「笑い」と「涙」のバランスが魅力です。

①酒浸りで働かない魚屋の勝五郎。大晦日の朝、妻に尻を叩かれ魚河岸へ向かう。

②市場が始まる前、芝の浜で革財布を拾う。
 なんと42両も入っている。

③喜んだ勝五郎は仲間と酒盛りをして酔い潰れる。

④翌朝、妻に財布の件を話すと「夢だ」と一蹴される。
 不思議に思うも納得し、禁酒・勤勉を誓う。

⑤真面目に働き、3年後には表通りに店を構えるほど繁盛する。

⑥妻が3年前の財布は本物だったと告白する。
 大家と相談し、横領を避けるため、そして勝五郎に真面目に働いてもらうため、夢だと言い聞かせたことを明かす。また、届けた財布が払い下げになったことを伝える。

⑦妻が「久しぶりに飲んでください」とお酒を勧める。
 勝五郎が、「よそう。また夢になるといけねぇ」

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