高浜寛さんの漫画が好きです。
緻密で文学的な世界観が第一の特徴です。
美しい衣装、アンティークな品物、煌びやかな遊郭など非常に丁寧に描かれていて、作品に深みを与えます。
ストーリーも秀逸。
深い人間ドラマ的な面白さだけでなく、風俗事情や依存症の描写を通じて社会の暗部に切り込みます。
今回は【蝶のみちゆき】をご紹介します🦋

ストーリー概要
①几帳(この葉)
丸山遊郭ナンバー1の太夫。
太夫は嫌な客を振ることができるのに、几帳は金さえ積めば誰でも相手にします。
出島での異人の相手も引き受けます。
ここに秘めた几帳の思いが、ほかの登場人物たちの思いと交錯していきます。
切ない純愛と別れを、几帳の生活や心情とともに描いた物語です。
②源一郎
几帳(この葉)の夫。
脳腫瘍のため体は動かず、言葉を発することもできない。
③健蔵
源一郎の息子。
病身の源一郎を見捨てた几帳を憎んでいる。
物語が進むにつれて几帳の思いを知ることになる。
④トーン先生
オランダ人の医師。
几帳に恋心を抱いている。
やがて几帳の本心を知ることになり、深く傷ついていく。
緻密な遊郭の描写
遊郭の描き方が凄まじくリアルです。
外観、内観、豪華な食事、煌びやかな装飾など素晴らしいです。
しかし、その裏にある性病の恐怖、返済できない借金、親に捨てられた喪失感など非常に暗く重たい現実も生々しく描きます。
几帳の生き方
ネタバレとなるので詳細は省きますが、最終的に几帳は残りの人生を遊郭で過ごすのだと言います。
全てを抱えて、太夫として絢爛豪華な遊郭の中で過ごすのです。
几帳の本心が我々読者に残された謎かもしれません。
私は、彼女が出島に対して「夢を見たい。」と言っていたのは、外の世界に出ることを夢見ているのだと解釈しました。
つまり、最後に几帳が遊郭で残りの人生を過ごすのは本心ではないと思いますがどうでしょうか。
ぜひ、ご覧になって考えてみて下さい。
個人的名言
「お前が男ならどがんたい?
例えさっきまで恨んどったとしても
死ぬ前に好いとる女が会いに来れば
恨み続けて死ぬっかいね?」
例え憎しみの末、別れたとしても、一度は愛し合った仲。最後に会いに来てくれたら⋯⋯、、